手術症例:断翼(翼端腫瘤切除)

6ヶ月前(生後半年)から右翼に腫瘤が形成され、だんだん大きくなるにつれて出血を伴うようになってきたアキクサインコが来院しました。本人も痛みがあることで気にしてかじってしまうため、エリザベスカラーでの生活となっていました。
まだ1歳と若く、この状態のまま今後過ごしていくことになるのか…と飼い主さんは悩まれていました。

レントゲンの結果、骨原発の可能性は低く、関節を超えて尺骨や橈骨等に浸潤していく様子はありませんでした。腫瘤ごと中手骨近位からの断翼術を提案しました。

肩関節からの断翼ほどではありませんが、翼端の断翼における注意も太い血管(橈骨動脈分枝血管)や神経の切断です。一気に切らないよう、半導体レーザーにて凝固、切開しながらそれらを切断していきました。血管の切断時に出血がありましたが、適切に止血処置することで大量出血には至りませんでした。骨については、出力を調整して切断、断面を炭化処理しました。皮膚および筋層を縫合できればよいのですが、本症例は骨の近位で間接面近くまで軟部組織腫瘤があり、皮膚の面積が極端に小さくなっていたことから縫合せずに被覆、テーピングして手術を終了しました。

翼の先の方はなくなってしまいましたが、今まで痛みから沈鬱状態が長かったようですが、痛みから解放されて本人はとても快適に過ごしてくれています。通常は術後エリザベスカラーを検討ですが、本症例では術部を全く気にしないのでカラー装着していません。

なお、腫瘤の病理組織検査結果は黄色腫でした。アキクサインコの翼腫瘤で時折認められます。悪性腫瘍ではないので大きくなくて気にしないならそのままで過ごしてもらうこともありますが、本症例のように拡大して出血を伴うなどのQOL(生活の質)が下がっている場合は手術をおすすめしています。