手術症例: 卵・卵管摘出術(卵管孔閉鎖あり)

鳥の卵管は漏斗部(卵巣からの排卵を受けとめるなど)、膨大部(卵白形成など)、峡部(卵殻膜形成など)、子宮部(卵殻形成など)、腟部(できあがった卵の一時保持)に区分され、卵を形成するためにそれぞれが役割を担っています。
卵は排卵後に卵管にて卵白や卵殻等が形成され、卵管の収縮を伴って卵管腟部に到達、卵管孔という出口から排出されます。


数日前からの卵詰まり(初産)のセキセイインコが来院しました。
卵圧迫排出処置を試みましたが、卵の出口である卵管孔にポリープが形成されており、卵ができても産むことができない状態が判明しました。
治療のため緊急の開腹手術をしました。

血液凝固機能低下があり、非常に出血しやすい子で、血管のアプローチに十分しながらの手術が必要とされました。
逆L字切開にて、皮膚、腹壁、肝後中隔を切開し、腸管をよけ、卵管にアプローチしました。まずは卵管を切開し、卵管内の卵を破砕および、摘出しました。続いて、卵管摘出。卵管間膜を半導体レーザーメスを駆使することで凝固および切開することで摘出しました。
大量出血することなく、卵・卵管摘出術は無事終わりました。


鳥の手術はいかに麻酔時間、総麻酔量を減らすこと、出血を少なくすること、腸管へのダメージを少なくすること、などが予後を左右します。
手術が成功しても術後に消化管機能が回復するのが難しい子もいますが、この子は術後ほどなくして食べ始め、排便も問題なく現在経過良好、本日退院しました。

卵が産めない原因はカルシウム不足、卵管の問題、腫瘍など様々ですが、この子のように卵の出口が塞がっている場合もあります。
卵の問題は生命に関わることが多いです。特に日常的に産卵を繰り返している子は要注意です。卵っぽいのに産んでない時、できる限り早く病院で適切な状況判断、場合によっては卵圧迫排出や、この子のように手術が必要となる場合もあります。