鳥類においても若齢で悪性腫瘍ができてしまうことがあります。
数日前からお腹が大きくなってきたとのことでセキセイインコが来院しました。3歳7ヶ月齢のメスで今まで産卵歴はありませんでした。

身体検査にて卵ではない何かがお腹の中にできていることがわかり、レントゲン検査、超音波検査を実施したところ、卵管と思われる臓器の腫瘍化が疑われました。卵管蓄卵材症の可能性も否定はできませんでした。飼い主様は手術を希望されました。


レントゲン検査(造影):卵管と思われる臓器が腫大することで圧迫された消化管全体が頭側変位している

超音波検査:実質性の腫瘤、もしくは卵管内に蓄積物の可能性も否定はできない
開腹すると、腫瘍化している大きな卵管腫瘍が確認できました。硬く実質性の部分と水ぶくれのようになる嚢胞性の部分が混在していました。嚢胞となった腫瘤に針を刺して抜水しつつアプローチできる視野を広げ、半導体レーザーにて卵管間膜や腫瘍部にて発達してしまった血管を凝固切開しながら止血クリップにて少しずつ腫瘤を摘出していきました。90%は摘出できましたが、腎臓近位で腹膜に癒着してしまっている部分はアプローチすると周囲の血管を損傷してしまう可能性が高く大量出血が避けられないと判断しました。残存してしまう腫瘍はできる限り焼烙し、閉腹しました。


摘出した腫瘤(左)と抜水した嚢胞水の一部(右)
腫瘤摘出によって体腔内の圧力変動、消化管の牽引の影響で術後に吐き気はありましたが、その日の夜には排便が始まり、経過良好。退院し、現在は通院治療中です。よく食べており元気に過ごしているとのことです。

摘出した腫瘤の病理検査の結果は卵管腺癌。悪性腫瘍でした。摘出した一部は抗がん剤感受性試験にて有効な抗がん剤を判定しています。残存した腫瘍が悪さしてくることに備えて、今後は再発に注意した定期的なチェック、再発してくれば抗がん剤投与を検討していきます。