手術症例:卵管蓄卵材症

4歳のセキセイインコの卵管蓄卵材症の手術をしました。

通常、卵巣から排卵されると、卵管がうけとめ、卵白、卵殻膜、卵殻などを形成して卵ができます。卵は一時的に卵管内(卵管子宮部~膣部)で保持されますが、24時間以内には産卵されます。このセキセイインコはたびたび産卵していましたが、2-3カ月前を最後に産卵しなくなった、1か月前からお腹が膨れているとのことで来院しました。

レントゲン検査(造影):卵管と思われる臓器が大きくなっており、消化管の頭側変位が認められる。

超音波検査:卵管内に複数の卵材が認められる。卵管外に落ちている可能性も否定できない。

検査結果から、排卵はされていますが卵管の中で卵の材料が正常に作られず、卵管内で卵材が蓄積してしまっている状態でした。自然に排出されることはあまりなく、腹膜炎の原因になってしまいます。手術にて卵材と機能しなくなった卵管の摘出を試みました。

開腹すると、卵管材に卵材が蓄積しているだけではなく卵管内の卵材が逆流して体腔内(お腹の中)に落ちてしまっていました。腹膜炎を起こして卵管子宮部が一部癒着してしまっていましたが、半導体レーザーメスを駆使することで卵管間膜を切開しつつ、卵材と卵管(子宮部の一部、膣部を除く)を摘出しました。

摘出した卵材と卵管 卵管子宮部は癒着しており、できる限りの摘出となった

腹膜炎をすでに起こしていましたが、術後の経過はよく退院。通院治療に切り替えました。卵巣や一部卵管は残存しているため、今後は発情抑制をしっかりする必要があります。がんばっていきましょう。