手術症例:尾脂腺腫瘤摘出術(高齢の手術における麻酔)

他院にて尾脂腺腫瘍と診断されましたが、高齢であることから手術はおすすめされなかったセキセイインコです。しかし、尾脂腺から発生している腫瘤が徐々に拡大しており、本人が気にしたり時折漿液が出てきていることからセカンドオピニオンで当院に来院しました。

年齢は12歳でした。年をとると麻酔リスクは若い頃よりも高くなる傾向にありますが、血液検査から内臓機能の低下は確認されず、聴診とレントゲン検査から心臓機能低下も著しくはないと判断できました。高齢であることから、このまま腫瘤ができる限り気にならないように鎮痛剤を飲みつつ寿命をまっとうすることを考えていた飼い主さんでしたが、腫瘤が大きくなって気になっている様子が目立つことから手術を希望されました。

腫瘤を尾脂腺ごと、バイポーラにて摘出しました。摘出は出血に注意しつつ、周囲の血管や尾羽周囲の筋肉を広範囲に損傷しないように注意しながら実施していきました。鳥の尾脂腺には皮膚がないので縫合することはできません。そのため、組織修復には時間がかかりますが、修復を促すために摘出後はメロリンにて被覆し、アベンドにてテーピング保護しました。

麻酔導入から手術終了までの時間を含めた総麻酔時間は20分で呼吸や心肺機能が低下することなく終始安全に手術を完遂することができました。手術後の経過もよく、2日で退院し、今まで尾脂腺にあった大きな違和感から解放され、元気に過ごしています。術後2か月ほどはテーピングで、組織修復させていきます。

退院時の様子:尾脂腺腫瘤摘出の場合はテーピングで保護しているのでかじって術創もいじってしまうようなことがなければエリザベスカラーを装着しません。しかし、この子はこの後にテープをかじりとるようになってしまったのでエリザベスカラーを装着しました。

一般診察での処置と同じく、鳥の手術や麻酔も適切な手技でいかに負担をかけないように施術することが大切です。高齢であっても術前検査でリスクを見極め、適切な麻酔管理と手術手技であればこのように負担少なく実施を検討していきます。

鳥の治療にて、手術を提案することはありますが、手術をすることが絶対正解というわけではありません。手術や麻酔という負担をかけないで過ごさせてあげることも不正解ではありません。その子にとって何をしてあげたいのか、どのようにいっしょに闘病し暮らしていくことが負担が少ないのか・・・、飼い主さんとよく相談しつつ治療に臨んでいきたいです。