尾脂腺腫瘍

鳥には尾脂腺という油分を分泌する部位が尾羽の付け根にあります(※オオハナインコなど尾脂腺をもたない鳥種もいます)。ここから分泌させる分泌液を羽繕いにて羽に塗って羽に撥水性や保温性を向上させることができますが、皮膚からもある程度の分泌があったりそもそもこの機能が必要ないとの報告もあり、尾脂腺の役割の全貌は多説あります。

さて、そんな尾脂腺が腫瘍化(がんになる)することがあります。尾脂腺腫瘍は発生初期は気にならないことが多いですが、大きくなると痛痒いため、違和感を感じて嘴でつついてしまい出血してしまうことがあります。

こちらはセキセイインコの尾脂腺腫瘍です。根治(完全治癒)を目指す治療は手術による摘出です。摘出し、病理組織検査の結果、扁平上皮癌という悪性腫瘍であることがわかりました。尾脂腺腫瘍は扁平上皮癌であることがあるため、がん細胞が浸潤(広がっていく)することでクロアカなどの周囲組織を圧迫してしまう前に発見し、早めに手術にて摘出することをおすすめしています。悪性腫瘍ですが、鳥の尾脂腺原発(尾脂腺が発生源になっていること)の扁平上皮癌の転移率は低く、完全摘出できれば再発することなく、良好な予後が望めることが多いです。

なお、鳥の扁平上皮癌はそ嚢や消化管にできることもあります。それらは尾脂腺とは発生が異なり、そ嚢などに発生する扁平上皮癌の治療は非常に難しいです。