セキセイインコが好発鳥種です。全鳥種で明らかにセキセイインコに多いことから、遺伝的要因があることが疑われています。
ろう膜褐色化のオスのセキセイインコ:明らかな褐色化(左)もあれば、まだ初期段階でろう膜の色の変化が乏しい場合(右)もある。
セキセイインコであればろう膜が褐色化することが特徴的です。哺乳類と同様に、精巣では男性ホルモンも女性ホルモンも作られており、オスでは男性ホルモンがメインで作られています。鳥類の精巣腫瘍では女性ホルモン(エストロゲン)を産生する細胞が腫瘍化(がん化)してしまうことが多いです(セルトリ細胞腫)。ろう膜褐色化の他に、メスのような行動(交尾許容姿勢)をとってしまうこともあります。
レントゲン検査:精巣と思われる体腔内臓器が拡大しており、筋胃などの臓器の頭側変位も認められる。オスでは本来認められることがない骨髄骨が上腕骨と大腿骨に認められる(多発性骨化過剰症)
レントゲン検査にて、オスで骨髄骨が確認された場合、オスでは通常多く産生されることがないエストロゲンが優位に産生されていることから、すでに細胞単位では腫瘍化している可能性が高いと判定します。なお、メスでは発情していることでエストロゲンが多く産生されている場合に骨髄骨が認められているのであれば正常です。
また、エストロゲンを産生する細胞ではない精巣の細胞が腫瘍化することもあります(精上皮腫、ライディッヒ細胞腫)。この場合にはセキセイインコでもろう膜褐色化が認められないので、お腹が大きくなってきた際にレントゲン検査にて精巣の腫瘍化が初めて発見される場合もあります。セキセイインコ以外の鳥種では精巣腫瘍は多くは発生しないのですが、エストロゲン産生性であったとしてもろう膜がないので気づきにくく、オスなのにお腹が大きくなってさまざまな症状が出てから初めて気づくことが多いです。
精巣腫瘍の治療方法について、は高度鳥類医療に記載してあります。