『そのう炎』と診断されていませんか?

鳥の具合が悪い=『そのう炎』(そ嚢炎)と診断されていませんか?糞便検査の他、必要に応じてそのう液検査、レントゲン検査、血液検査を実施されていますか?その診断に具合が悪い以外の理由はありましたか?

ネットなどで調べて『そのう炎』、という病名は聞いたことがある・・・という飼い主様もいるかと思います。そんな『そのう炎』についてのお話です。

『そのう炎』とは、日本で鳥の医療があまり発展していなかった頃(40-50年ほど前)、古い本に載っている病名でした。その頃は今のような技術はなく検査をすることができず、鳥はよくわからないな・・・検査もできないし・・・鳥が具合が悪い=『そのう炎』、と安直に診断されてしまっていたようです。

鳥の医療が発展した現在、実際には『そのう炎』という診断することはほとんどありません。そのう液検査にて炎症細胞が認められた場合、その原因のほとんどは、トリコモナス感染によるそのう壁への炎症、観葉植物の誤食によるそのう壁への炎症、鼻炎や副鼻腔炎といった上部呼吸器疾患に随伴して炎症細胞がそのうにトラップされている、・・・などがあげられます。例えば、トリコモナス感染が原因でそのうに炎症を起こしている(そのう炎)、と言われることは正しいです。しかし、これらが否定的で原因が不明な『そのう炎』は、めったに見ることはないです。なお、そのう液検査をしない場合、『そのう炎』と診断は不可能です。そして、仮にそのう液検査をした場合でも『そのう炎』と診断できることはほとんどないのです。

では、そのう液検査はどんな時でもやるべき検査なのか?・・・そんなことはありません。何の病気を疑っているのか、診断のために必要に応じて実施すべき検査です。例えば、1歳未満のセキセイインコが吐いている・・・という場合にはトリコモナスなどの可能性を考えてそのう液検査はする必要があるのではないかと思います。一方で、5歳のセキセイインコで吐いている・・・という場合には状況次第ですがレントゲン検査が優先されるかもしれません。

『そのう炎』と診断され、とりあえずの抗生剤を処方されている・・・残念ながら近年でもそんな診断を受けてしまっていることがあるようです。現在の鳥の医療は発展を遂げています。たくさんの鳥が適切な鳥の医療を受けられるようになることを切に願います。